日本犯罪社会学会 Japanese Association of Sociological CriminologyJASC

会長の挨拶

第17期会長挨拶

日本犯罪社会学会
第17期会長 浜井浩一


 石塚前会長の後を受けて第17期の日本犯罪社会学会の会長に就任しました。どうぞよろしくお願いします。

 さて、本学会の英語表記は、Criminological Sociologyではなく、Sociological Criminologyとなっています。これは、本学会が日本における犯罪学(Criminology)の受け皿としての役割を担うのだという先人の意思を表しているのだと思います。犯罪学の特徴はその学際性にあります。社会学だけでなく、心理学、医学や法学など社会や人の行動を扱う様々な学問領域の方法論を用いて犯罪現象を解明しようとするのが犯罪学です。Criminologyを名乗る本学会の特徴の一つも、その学際性にあります。その学際性は学問領域だけにとどまらず、研究者と実務家が交流する場としての多様性も含んだものとなっています。

 私が、所属する様々な学会の中で本学会を母学会と考え活動してきたのも、このような本学会の特徴があったからです。それは、私自身の経歴とも深く関係しています。私はもともと心理職として法務省に採用され、矯正・保護すべての実務を経験し、アメリカやイタリアで犯罪学を研究し、法科大学院で12年間教鞭をとってきました。私の研究者としての最大の特徴は、その学際性に加えて、政策立案を含めて犯罪者処遇の実務を知っていること、実務を通して多くの人たちと出会ってきたこと、そして、犯罪白書の編集を担当するなどマクロレベルでの日本の犯罪や刑罰を分析した経験があり、さらに国連に勤務したことで日本の犯罪や刑罰を国際的な視点から見た経験を持っていることにあります。

 私の会長としての抱負は、本学会の持つ学際性と多様性の伝統をさらに発展させることで、犯罪学の持つ可能性を追求していくことだと考えています。石塚前会長も指摘したように、本学会は現実の犯罪現象をめぐって様々な分野の研究者や実務家が自由闊達な議論する「場」として発展してきた経緯があり、だからこそ実務に還元できる成果を上げてきたのだと思います。理想をひたすら追求する研究者と現実が持つ様々な制約の中で妥協を繰り返しながら最善の選択をしなくてはならない実務家とでは立場が違います。しかし、理想を持たない実務からは何も生まれません。同時に、実務(現実)を軽視した犯罪学が真理にたどり着くことはないと思います。

 全国理事会や総会での会長就任あいさつでは、「世代交代」と「感謝と恩返し」という二つのキーワードを挙げさせてもらいました。研究者としての私を育ててくれたのは日本犯罪社会学会です。その恩に報いるためにも、3年間、研究と実務、そして世代間の架け橋となることで本学会が更に発展できるように微力を尽くしてまいりたいと思います。

以上