日本犯罪社会学会 Japanese Association of Sociological CriminologyJASC

会長の挨拶

第15期会長挨拶

日本犯罪社会学会のゲネシス(創生)
 

日本犯罪社会学会
第15期会長 石塚伸一

 

 ゲネシス(Genesis)は、ユダヤ教・キリスト教などの聖典で「創世記」のことである。ヘブライ語では「はじめに」と呼ばれ、ギリシャ語では誕生、創生などの意味に使われていた。最近では、2011年「猿の惑星・ゲネシス」が1968年にはじまるこのシリーズの根源である人間と猿の役割転倒の「はじまり」を謎解きしてくれた。

. 日本犯罪社会学会は、1974年、「犯罪社会学の発展・普及および研究者相互の連携・協力」 (会則第2条) を目的として設立された。この年、わたくしは高校を卒業した。
 設立当初、那須宗一、岩井弘融、柏熊岬二、四方壽雄など、日本における犯罪社会学の草分けである大御所を澤登俊雄、所一彦、星野周弘などの中堅と横山実、荒木伸怡、森田洋司、矢島正見などの若手が支える新進気鋭の学会であった。
 日本犯罪社会学会は、100年以上の歴史をもつ日本社会学の理論に依拠して社会病理を研究してきた社会学の系譜と第2次大戦後のE・サザランド『犯罪学』の翻訳にはじまる平野龍一や宮内裕の刑事学研究の潮流とが合流したところからはじまった。1970年代、本家アメリカでは、リベラルな政治思潮を背景に、シカゴ学派の伝統理論をラベリング論(相互作用主義)が激しく批判していた。日本で犯罪社会学に興味をもつ人は、どこかしら既存の社会学・法律学の評論家的姿勢や権威主義的ドグマに疑問をもつ研究者であった。他方で、戦後日本の社会科学には、そのレフト・ウイングにマルクス主義の堅牢な社会理論と民主主義法学がある。犯罪社会学会は、保守と革新に挟まれたエアポケットであり、自由闊達な議論ができる「場」でもあった。
 会員は、大学・研究所などに所属する専門の研究者だけでなく、裁判所・刑事施設・更生保護・教育機関などに勤務する実務家たちであった。最近は司法福祉やNPOなどで活動する会員も増え、そのアクターは多様化している。
 今回、会長の指名を受け、先人の思いと積み上げられた業績をつぎの世代に手渡ししていくというミッションを与えられた。第15期理事会は、引続き大阪商業大学に事務局を置き、谷岡一郎副会長に補佐していただきながら、庶務・会計の両委員会を中心に学会の運営を進めていく。また、研究委員会による年次大会の企画運営、編集委員会による機関誌『犯罪社会学研究』の発行という学術の基盤活動に加え、新たに3つの目標を掲げることにした。
 まず第1は、悲願である会員500人の達成である。そのためには、会員の活動領域の多様化だけでなく、若手を発掘する必要がある。企画調整委員会には「犯罪学リテラシー研修」を各地で開催し、犯罪学の裾野を広げていくようお願いした。
 第2は、研究と教育と社会貢献という学術の発展サイクルの基盤形成である。現在、法曹養成の混乱の中で大学における刑事政策学・犯罪学のポストが減少し、大学院における若手研究者の養成に暗い影を落としている。社会的ニーズを考えてみても、刑事政策と少年法を司法試験の受験科目に組入れ、実務法曹のミニマムスタンダードにすることが法曹養成にとってきわめて重要な課題である。渉外広報委員会には、他学会や関係機関への働きをお願いした。
 第3は、上記の発展のサイクルを確立するため、大学に犯罪学を研究・教育する教学主体(学部・学科・大学院等)を創設することである。創世記の先達たちは、社会学・法律学の関連学部に所属し、ゼミ生や大学院生を育て、この学会の礎を築いた。しかし、科目担当制の大学では、偉大な教育者の引退によって、学問の灯火が消えてしまう。国立・公立の大学には犯罪社会学・刑事政策学に特化した講座や研究所がない。私立大学の財政は授業料で支えられているので、教学主体として独立しないと恒常的に教学を展開することはできない。諸外国にみられるような犯罪学、刑事司法学の共学主体を開設し、犯罪社会学を学問として創生する必要がある。

 I have three dreams.
        Near future they will come true.
               Shall we do criminology?

 日本犯罪学のゲネシスをめざして・・・。

2015年1月 京都深草にて

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